大学院(史学科)を受験される方へ~試験内容と対策編~

今回は史学科の大学院を受験される方向けに記事を書きたいと思います。

私は東京の私立と地方の国公立を受験しましたのでそれぞれの受験の流れを説明するとともに準備するべきことを書いていきます。

古文書には直接関係しませんが、このブログの読者層を考えると学生さんも多くいらっしゃると思うので参考程度に読んでいただければと思います。私の体験談は博士前期(修士)の4月入学・日本史学・近世史のものですが、同じ日本史であればやるべきことは変わりません。

大学院入試の過去問は史学科の場合英語の試験がありますので著作権の関係上インターネットで公開ができません。そのため過去問分析は各大学の大学院事務課でその場で見せてもらって行うことになります。コピーもさせてもらえないのがほとんどのようです。

試験前の提出物

出願時に提出する書類は各大学により異なりますのでよく入学願書を読むようにしてください。字数制限や書式など注意する点がいくつかあります。私の時は次のようなものがありました。

・志望理由書

・卒業論文に代わるレポート

・成績証明書

・卒業見込証明書

試験の内容

私立大

①筆記

・英語:長文全訳。辞書持ち込み可。

・専門分野の問題:古文書解読、通史に関する基本的な論述、活字史料の読み下しや解釈。

②面接

入室後名前と受験番号の確認を行います。

・卒業論文について(内容、研究動向、テーマを選択した動機、卒業論文の位置付け=自分の卒業論文がそのテーマの研究の中でどのような意義があるか)。

・博士前期課程修了後の見通し(学芸員を志望するのであれば学芸員資格を持っている必要がある。

地方の国公立

①筆記

・英語:傍線部の和訳。辞書持ち込み可。

・専門分野の問題:古文書解読と解読した文書の背景知識、通史に関する基本的な記述。

②面接
・卒業論文について(内容、研究動向、テーマを選択した動機、卒業論文の位置付け=自分の卒業論文がそのテーマの研究の中でどのような意義があるか)。
・博士前期課程修了後の見通し(学芸員を志望するのであれば学芸員資格を持っている必要がある)。

・近年の地域史研究の動向。

対策方法

〈英語〉

私が自分の先生に言われたのは英語は英語科の先生が問題を作成し、採点するので史学科の先生が介入できず事実上の足切りであるということでした。

英語ができなければどれだけ自分の専門分野や面接が良くても不合格になってしまいます。英語でまず専門分野以前の基礎学力があるかどうか試されている訳です。

私は大学入試の際にセンター試験8割得点できる程度英語力がありましたのでそれほど試験勉強も当日も苦になりませんでした。勉強に使用した単語帳は「院単―大学院入試のための必須英単語1800」ナツメ社 (2006/7/1)を使用しました。

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この単語帳の良いところは基礎単語と専門の単語に分かれており4年間で忘れていた単語を思い出せる点、例文がとにかく豊富で英語の言語感覚を養える点だと思います。

史学科向けの単語帳というのはないですが、実際出題されるのは歴史に限らず社会学系の論文になりますのでこれを選んで正解だったと思っています。

いくら辞書持ち込みが可能とはいえ全単語辞書を引いていたのでは時間が足りませんから語彙の獲得は必須課題といえます。

大学院入試では和訳が主な出題形態ですので精読が要求されます。教材選びは文構造の解説が細かくしてあるものが適していると思います。

しかし人文科学系大学院向けの教材は乏しいので探すのには苦労すると思います。私が使用した教材ではありませんがこの記事を書くにあたり立ち寄った大手書店で上記の条件を満たしているものは湯川彰浩著「大学院入試の英文法」秀和システム (2017/3/21)だと思います。東大・京大を突破する英語力が身につくかはやや疑問ですが実践的な良い問題集だと思います。

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〈古文書解読〉

過去問や受験した日に出題されたものを見ると村方文書が多いです。古文書解読の中でも基礎的な短い証文や願書が多いです。

地名など難しい字が入っていることもありますが基本的な心構えとしては満点を目指しましょう。特別な対策をするというよりかは普段の学習成果が問われる問題です。

〈活字史料の読み下しと解釈〉

通史にかかわる主要な史料が出題されます。読んだことがなくても何についての史料答えられなければなりません。普段の学習も重要ですが「史料による日本の歩み〈近世編〉」を丁寧に読むことで様々なジャンルに対応できるようになりました。

何せ児玉幸多先生と佐々木潤之助先生というビッグネームのお二人の本ですから悪い訳がありません。近世編以外にも各時代シリーズで出版されています。

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〈面接〉

卒業論文について聞かれる時間が面接の中でも多くの時間を占めます。卒論は四年の夏までにはある程度形にしておく必要があります。聞いた話ですが面接で史料の読み下しや解釈を行う大学もあるようです。

以下に実際に質問されたことや私が面接官だったらすると思う質問と答えなどをまとめてみましたので参考にして頂ければと思います。

当たり前のことですが大きな声でハキハキと話すようにしましょう。日頃聞き取りづらいと人から言われたり聞き返されたりすることが多い方は意識的に大きい声を出す習慣をつけましょう。

◎面接の質問 あらかじめ提出した志望理由書を基に進みます

Q.(面接の冒頭で)筆記試験の感触はどうですか。

A.英語に少し自信がありませんが古文書解読が良くできたと思います。

Q.本校を志望された理由はなんですか。

A.①私の研究対象とする地域がこの大学に近いからです。

②研究費の助成などの仕組みが良いと考えたからです。

③自分の専門分野に近い先生がいらっしゃるからです。

Q.卒業論文の〇〇というテーマを選んだ動機を教えてください。

A.××という点に興味を持ち、△△ということを明らかにしたいと思ったからです。

Q.先行研究の中で〇〇氏はどのような史料や手法を用いて〇〇ということを示したのでしょうか。

A.〇〇地域の史料を用いて〇〇期から〇〇期の変化を〇〇のように説明しました。

Q.近年の地域史研究の動向を述べて下さい。

A.身分的周縁に位置する人々の研究が盛んで〇〇氏の研究などがあります。

まとめ

大学院入試では基本的に普段の学習の成果が問われます。もし進路選択の一つに大学院進学を考えているならば早めにご両親と相談し金銭的な問題をクリアした上で準備をはじめましょう。

【一口情報】

自分の通っている大学に史学科の大学院がある場合内部から進学すると入学金が免除される場合が多いです。

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